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歯周疾患とカルシトニン

高石歯科医院院長  高石 佳知
CLINICAL CALCIUM 第11巻9号 別冊
 

Summary
カルシトニン(CT)の生物学的作用は、破骨細胞性骨吸収の抑制であり、歯周組織の治療を促進する作用を有する。歯周疾患に対するCTの効果の検討は少ないが、骨粗鬆症と歯周病の関係が明らかにされ、歯槽骨吸収、歯根吸収が破骨細胞によることから、カルシトニンの歯周病治療への可能性が考えられる。

はじめに
カルシトニン(CT)は、ヒトなどの哺乳類では甲状腺C細胞より分泌される32個のアミノ酸よりなるペプチドホルモンで、1962年Coppらによりイヌの副甲状腺にある血清カルシウム低下作用物質として発見された。
CTの生合成については、CT遺伝子が組織特異的に選択的スプライシング(alternative splicing)を受け、同一遺伝子からC細胞ではCTが、神経細胞ではカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene related peptide ; CGRP)が産生される。

CTの生物学的作用
骨吸収は、破骨細胞が硬組織上で形成する波状縁膜(ruffled border)からの酸(プロトン)分泌によるミネラル溶解ならびに、加水分解酵素による有機基質の消化によりもたらされる。CTの生物学的作用は、破骨細胞のCT受容体に結合し、この波状縁を消失させ、骨表面から破骨細胞を離脱、あるいは骨表面での破骨細胞の運動性を抑制することで骨吸収を阻害する破骨細胞性骨吸収の抑制であり、著明に骨吸収の亢進した病態において特に有効である。また、著明な除痛効果を有し、骨吸収抑制作用により、骨量改善効果も認められることから骨粗鬆症患者に多用されるが、歯周病による歯槽骨の吸収も骨粗鬆症と同じ破骨細胞を介したメカニズムであることが分かっている。血中CT濃度の高いものでは年間の全身骨量は維持の傾向にあるのに対し、CT濃度の低いものでは年間の全身骨量は減少傾向にあることが明らかとなた。
以上のことで、骨粗鬆症ならびに歯周炎の予後にCTの占める重要な意味を示唆するものである。

歯周疾患とCT
歯周疾患とは、歯の支持組織である歯肉、歯根膜、セメント質および歯槽骨が歯垢中の微生物並びに、その代謝産物により局所的に刺激されて引き起こされる慢性の炎症性疾患である。その炎症が歯肉に限局したものを歯肉炎、歯槽骨まで及ぶものを歯周炎と呼ぶ。
歯周組織には多くの神経線維が認められるが、近年CGRPなどの神経ペプチドは神経伝達物質として働くのみでなく、炎症や免疫反応ならびに骨吸収にも深く関与していることが明らかになってきた。
特に歯周炎では、特に深い盲嚢(ポケット)において、歯肉溝浸出液(gingival cervicular fluid ; GCF)を産生し、CGRPを下げる。また、GCFのなかにCGRP-IR(CGRP immunoreactivity)の存在が示された。歯周炎の歯肉では、サブスタンスP(SP)、およびCGRPが頬側ならびに隣接歯間歯肉上皮、上皮組織内に接近して生じ、重度の歯周炎、歯周組織の壊死組織の周囲組織にCGRP-IR神経線維の広範囲の増加が認められた。
歯周疾患患者のGCFは、プロスタグランジンE、インターロイキン1、インターロイキン1β、その他の要因が作用し、骨吸収活動に重要な役割を果たす。CTは、GCFの刺激作用を抑制した。
また、CGRPは、CTと同様に骨代謝のバランスを骨形成の方向に制御する作用を有しているが、実験的歯周炎を惹起させたpolychlorinated biphenyl(PCB)投与ラットで、歯周組織のCGRP含有神経の分布を検索したところ、炎症反応の進展にともないCGRP含有神経の数が増加した。
また、SP、CGRP含有神経の数は、自然発症歯肉炎ラット(ODSU/Odu)の炎症歯肉において増加していた。これらから、SPおよびCGRPが歯周炎の進展に対して、局所的制御に深く関与していると考えられる。
また、内部成長的なプロスタグランジン生産過程により、ブラジキニンは、破骨細胞を媒介とした骨吸収を刺激するが、CTはこのブラジキニンに刺激された骨吸収を抑制した。また、プロスタグランジンが歯周炎による骨吸収の増加および骨形成の減少の両方に関係するが、CTは骨吸収を相当抑制し、骨形成を増加させた。
臨床応用としての報告は、CTを根管内に貼薬すると、歯周組織の炎症を鎮め、炎症性歯根吸収を抑えることが示唆された。また、CTを根管内に貼薬すると、実験的に引き起こされた炎症性歯根吸収を抑えることが示唆され、外来のタンパク質がある状態でさえ、CTは、根管から歯根表面にひろがり、歯根ミネラルを強くまた可逆的に結合させることを認めた。また、歯周疾患患者へCTを1.5~2.0単位を14日注射してフラップ手術を併用すると治療効果を認めた。
これらにより、歯周疾患における歯槽骨退縮と骨粗鬆症における骨破壊には、同じ破骨細胞を介したメカニズムが関与することが明らかであり、CTは破骨細胞の骨吸収を抑制することから、歯周疾患と骨粗鬆症で同じ治療法が共有できることが示された。

おわりに
歯周疾患と骨粗鬆症の関係が明らかにされ、歯槽骨吸収、歯根象牙質吸収が破骨細胞によることから、CTの歯周疾患治療への可能性が窺われる。
また、骨粗鬆症の進行ならびに歯周炎の進行機序の相関関係から、CTの血液検査により早期に、歯周疾患の進行予測の可能性も窺われる。CTの歯周疾患治療応用への重要な意味を示唆するものである。

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